概要
はじめに、ことばの危機は心の危機であり文化の危機であることを話されました。
*核家族化・少子化の進展に加えて、テレビ、パソコン、ゲーム、スマホなどの普及による情報環境が激変。子どもたちはバーチャル・コミュニケーションに漬かっているうちに人間同士の接触が希薄になり、ことばの発達の遅れ、思考力の弱さ、語彙力、表現力(特に感情の表現)、読解力などが衰退し、自己肯定感の育ちが危うくなっている。その実態について…具体的な話でした。
*30数年間、子どもとことば研究会が大切にしてきたことは、
・子どものことば・言い分を聴く、それが保育のはじまり。
・ことばの記録から、そのことばの背後に感じられる目に見えない心の声を聴き、共有することで子どもの理解を確かにし、「子ども性とは何か?」「子育て支援とは?」を追求できるようになってきた。
本論では、保育で今、最も大切にしたい −3つの言葉の世界− について話されました。
1 共感の言葉
大人から聴き取られる経験を十分にし、自分の気持ちに共感してもらえた子が、自分を認知し、人の話をしっかり聴き、相手の気持ちを理解しようとする子どもになる。特に悩んでいる時、一番頭を働かせていると言われる。子どもが困っている時、葛藤している時こそ、大人の共感的ことばが求められる。人と共感しあうことは、人間にとって最も大切な基礎能力と言えるのではないか。
2 自分で考える力、人間であることの尊厳性
今、子どもたちの思考力の弱さをもたらしている最大の原因は、言語能力の弱さ(特にある。そこで子どもの思考力の発達について述べていったが、ここで時間が無くなってしまい次の3つ目の話ができずに終わってしまう。)
3 絵本、お話、ことば遊びなどことばの心地よさや、想像力を育むことば
絵本やお話を読むことは作中人物と一緒になる想像力や思いやりを育てることになる。また自分を対象化して自己を他の人物から見ることができるようになる。
<参加者の感想から>
●「もっと、もっと先生の話が聞きたくなるほど、とにかく聞いていて楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまい残念!」「ぜひまたこの続きを聞かせてほしい」というものが多数。
●私はつい子どものことばを最後まで聞かず、先回りして言ってしまったりすることが多かったと反省しました。
●忙しさを理由に子どものことばの記録を残していないのでこれからは何としても子どものことばを聞き、記録していく決意です。
講師プロフィール
20数年間、公立保育園で保育士として働き、「子どもとことば」「自我の育ち」「遊びこそ豊かな学び」を柱とした実践研究を積み重ねる。保育園を退職後、お茶の水女子大学非常勤講師を経て、大学にて20数年間保育者養成にあたる。子どもとことば研究会代表、元立教女学院短期大学教授。