第33回 全国子どもとことば研究集会
【講演】
17日(土)10:15〜12:00

「心とからだと魂、そして言葉」

小児科医・聖路加国際病院顧問
細谷 亮太(ほそや りょうた)


概要

 公益財団法人「そらぷちキッズキャンプ」の代表理事など、様々な場所で活躍されている小児科医の細谷氏を迎えて、病院勤務での経験をもとに「心とからだと魂、そして言葉」について講演いただきました。

 古くから愛されてきた歌や短歌のように美しい日本語がたくさんある一方で、近頃は「死ね」「消えろ」などといった言挙げの反乱をよく目の当たりにする。言霊という言葉があり、本来言葉というものは「幸せが来ますように」「ずっと幸せでいられますように」と相手に対して贈るものである。
 しかしながら、幼少期に正しい日本語を聞かずに育った子どもが増えたことで、そのような言葉を発する子どもが多くなってきている。
 病院で小児がんなどの子どもの命を看取る仕事をずっと続けてき中で、死について体験してきた子どもたちの言葉に耳を傾けると、相手のことを思いやる気持ちが表れていた。
 例えば、小児がんと足を骨折した2人の5歳児が過ごした病棟では、夜中に抗がん剤の副作用で嘔吐してしまった時に、もう1人の子が看護師を呼んだり、車椅子での移動を気遣った言葉をかけてあげたりしていたのである。この2人からはそんな姿が見られたのだ。これらは相手の置かれている状況をお互いによく知っていたからこそできた気遣いではないだろうか。
 以前は不治の病と呼ばれた病気も近年は治療できるようになってきたことで、病院では子どもに対しても病気の宣告をするようになった。そういった際に子どもと関わる上で気をつけているポイントが3つある。
@嘘をつかない。
A分かるように説明する。
Bあとのことを考えて話す。
 子どもといえども一人の人間として関わり、自分のことを自分が理解できるようにする。つまり、子どもと真剣に向き合うことが大切な話をする上で何よりも大切なことだと細谷氏は話す。

 命に関わる難しい話でしたが、保育の世界と小児科医の世界で共有するべきことについて考える良い時間となりました。この講演の内容は園に持ち帰って園全体で話し、子どもとの関わり方や言葉の受け止め方について、もう一度、考え会いたいと思いました。(中村大我)


参加者の感想から

「ちゃんとした言葉を子どもに伝えたい」という言葉や小児科医は子どもに嘘をつかない、わかるように話をする、反応を考えながら話をすると言うことが心に残った。私たち保育士と同じだと言う思いと、改めて子どもとしっかりと向き合わなければと思った。

“子どもは子どもなりに大人”。先生の話がとても印象的でした。ビデオを通して考えさせられること、子どもの言葉を通して見える心の動きに胸がいっぱいでした。

生きる力を育てたいと思っています。大人こそが子のことば、目線に真剣に向き合い、うそをつかずことばをかわす事の大切さが改めて身にしみました。“先生も泣きたくなる”という話を聞いて、自分だけじゃないと胸があつくなりました。