第33回 全国子どもとことば研究集会
【分科会】
17日(土)13:00〜16:30

「絵本をたのしむ」

アーティスト・絵本作家
田島 征三(たしま せいぞう)

世話人
市川 美代子(児童図書館研究会・科学読み物研究会会員)
齋藤 和子(保育者)
末永 優海(保育者)


概要

 田島征三さんは、これまでの人生を振り返って、田島さんご自身が大切にしていること、どのようにして作品が生まれたのか、作品を通して伝えたいことを話してくださいました。

 22歳の時(1962年)に創った手刷りの絵本『しばてん』は、土佐で過ごした少年期の、心に深く刻まれた思い出を綴るエッセイ集(『絵の中のぼくの村』)にも書かれている、センジに田島さんが負わせた心の傷のできごとが基になっている作品という。

 抽象で描いたり、具象で描いたり。タブロー画家として出発したのが1965年。同じ年に『ふるやのもり』で絵本作家として出発した。抽象画の持っている深さと、短い言葉の深さと、その両方が響きあって一つの表現になっている。文学的な世界、絵というビジュアルな世界、この両方があって絵本になっている。

 絵本というのは、どうしてもこれだけは伝えたいことをどう表現するかということ。決して多くの人に広く伝わらなくても、誰かの心をずっとゆすぶり続ける、その人の人生そのものをゆすぶり続けている、そういうものが本当に出さなければならない絵本じゃないかと思う。

 「絵本と木の実の美術館」では、絵本的感覚で一つの空間を現代美術にしてしまうということだった。10年間たってずっとたくさんの人に支持されてきた。大島でやった瀬戸内国際美術祭でやった作品も、絵本という表現方法の一種をつかったと思う。

 今やり終えたことは、ハンセン病回復者の方の70年間閉じ込められた人生というものを、五軒長屋の一つの家屋の中で表現した。人の心にずっと入って離れなくしてその人の人生をも支配するほど大きな力で揺すぶるという表現でないと、ハンセン病になったために70年間も閉じ込められ、たくさんの悲劇を見てきたひとりの男の人生なんて、そうやすやすと表現できない。そういう強いメッセージ性を持とうとする芸術作品、そういうものはむずかしい。難しいけれども芸術作品をつくらなければならない。アートをアートとして表現したい。

 今、ラオスのアーティストと一緒に、ラオスの森、環境問題についての絵本をつくろうとしているのですが、めちゃくちゃむずかしい。まだ2〜3年はかかるだろう。

 今回は、1日ではなく半日の分科会となり、しかも大勢の参加者がありました。
 全員の自己紹介は行わず、絵本を実践した方の感想は話していただけるようにして、できるだけ田島征三さんのお話をお聞きできるように進めました。 (市川 美代子)


参加者の感想から

田島さんの語り口調のおだやかさ、面白さ、そして人生のいろいろな経験から、これらの絵本につながっているのだと感じました。今は2歳児クラスの担任なので、まだ難しさもありますが、子どもたちにたくさんの絵本と出合わせてあげたいと思います。

『とべバッタ』の絵本が好きで、それを描いた方はどんな方なんだろうと思い、ぜひ参加したかったです。心が動かされたり、なんだろう!これは と感じて生きる生き方が保育につながると思いました。自分も今ハンセン病のことを知りたくて、本を読んでいます。知識がないのでもっと知りたいです。

絵は筆の先から、その人の生き方(人生)が出ている のことばが心に響いた。