第32回 全国子どもとことば研究集会
【講演1】
18日(土)13:00〜14:30

「詩が開いた心の扉」

作家・詩人
寮 美千子(りょう みちこ)


概要

 むじゃきに笑う、すなおに喜ぶ、ほんきで怒る…ごく当たり前の感情を出せない子どもが不幸な犯罪を引き出してしまう。奈良少年刑務所の建物見たさに訪れ、そこに展示されていた受刑者の詩や絵に心を打たれた。凶悪犯というイメージとは全く違う彼らの一面に接した。何より受刑者たちの更生を願う深い愛情を感じた。罪を犯した少年たちは子どもの頃、精神的身体的な傷を受け、心を閉ざしている。
 めったに見せない心の内を言葉にし、文字として綴り、それを声に出してみんなの前で朗読する。仲間が朗読する詩を聞く時、受講生たちはみな耳をすまし、普段のおしゃべりとは違う次元の心持ちでその詩に相対する。詩という概念にとらわれず自分のことばで表現したたくさんの詩は心に響くものばかりだ。受刑者たちは交流感がない見えない壁の向こうにいる。しかし、回を重ねるごとに薄らいで見る見る変化していった。ほとんどの受講生が明るい、いい表情になってきて人間関係もスムーズになった。ありのままの素直な言葉を受け止め「いつでもみているよ」「大切に思っているよ」という気持ちを伝えるだけで、自分たちで芽を出しみるみる成長していく。受刑者たちの心の声に、どうか耳を傾けてみてください。


参加者の感想から

とても共感しました。同じ思いで子どもと過ごしていますが、犯罪に走ったりする不幸を味わってほしくないと思っていたところに、それでも人は人間として取り戻していける、生き直しができるという希望を見ました。先生のお話は今の小学校、中学校の現場の先生方に聞いてほしい。狭い価値観の中で評価され続ける。ある意味監獄だと思う。生徒も、教師も…。

めった聞くことができない刑務所内の実態を知ることができました。ニュースでもよく見る犯罪を起こした人に対して、「この人はどう育ってきたのだろう」「何かが足りなくて誰にも助けを求められなかったのだろう」と思うことがありました。どんな極悪なことを起こしても人から生まれた同じ人間なのだと思う中で、実際にその人たちと関わり、手を差し伸べられた寮先生の話がとても胸に突き刺さりました。